第9話「悪化」

入院2週目の週末、金曜外出、土日外泊、というスケジュールでハメを外す。
罰が当たったのか、病院に戻ってくる頃にはしっかり風邪ひきになっていた。
もともと病院内でも風邪がはやっていて「ちょっと風邪ぎみカナ?」と思っていたんだけど、家に帰りたかったので無理したのがいけなかった。
  
その週の始めは「咳・微熱・倦怠感」ぐらいだったのだが週末にはIVH(あいぶいえいち、高カロリー点滴、絶食を意味する)をつけるような状況になっていた。
風邪の悪化に伴い潰瘍性大腸炎の方も悪化し血便は完全な血になった。
自分でもわけのわからないまま、坂道を転がるように悪くなって行く。
それはそれは、いろんな意味でド迫力の転がりようであったと言えよう。
  
ベットで苦悶の表情で(イビキ用耳栓装着)寝ていると、看護婦さんが「隣の病室への移動」をすすめてくれた。
「トイレが少しでも近くなる、Sさんのイビキが聞こえない、隣の方がまだ寒くない、ベットが丁度空いている」などの理由で移動することになった。
本当は個室に移したいところなのだが、空いている個室が無いという事だった。
 
しかし隣の部屋に移ったのはいいが、そこもまた、ややこしい部屋だった。
かなわんオッサンが1人いるのだ。
なんでも「ワシは今風邪ひいたら命にかかわるんや、前に風邪ひいてエライ目におうたんや」らしい、とても命にかかわりそうには見えなかったが。
そして、ウンウン寝込んでいる僕に「ほやから風邪ひきの誰かさんは、ええメイワクなんや」など心優しいオコトバを聞こえよがしにおっしゃっりやがるのだ。

更にたちの悪い事に「オッサンの孫(幼稚園児X3匹)御一行」がコリャまたうるさい。
頼んでもないのに「キーキー」頭に響く声で御菓子の取り合いをしてくれるのだ。
しかも親は全く注意しない、それどころか「昨日スマスマで慎吾ちゃんがなぁ…」「見た見た!私も慎吾ちゃん好きやわぁギャハハ!」等と大きな声でしゃべっている。
はぁはぁ、なんか今さら腹たってきたぞコンチクショウ。
しかし、その時は熱と腹痛でモウロウとしてたので文句を言う余裕すら無く、ただ目を閉じて眉間にシワを寄せながら、じっと寝ているしかなかった。