第18話「転院前夜」

転院前夜、手紙を2通書いた。
1通は劇団のやつらに、もう1通は例の彼女宛だ。
ここ一週間ほど夜はあまり眠れなくなっていたので2時くらいまで手紙を書いていた。
ステロイドの副作用もあるのだろうが不安で眠れない、心臓の鼓動がうるさいくらい聞こえたり、「不安」がまるで物質のようになんとも言えない感触や重さで感じられる、嫌な味までするんだから不思議だ。
  
2時になるとプレドニンの注射をするために看護婦のKさんがやってきた。
Kさんはおっとりした感じの優しいお姉さんで、結構かまってもらっていた。
「まだ起きてたんや、・・手紙書いてたの?」
「あぁ、うん、明日劇団の公演なんや。ほんまやったら見に行く予定やったんやけど明日転院やから手紙だけでも書いとこ思て。それになんか寝れへんしな…」
「少しでも寝とかなあかんよ・・・やっぱり不安?」
「・・・うーん、そうやなぁ不安かなぁやっぱり。なぁKさん、オペした後って体はどないなるんやろ?大腸無くなっても、なんともないんやろか?」
「・・・私も良く知らないのよ、・・・ゴメン。」
「そやなぁ大腸全部取るヤツなんか滅多におらへんから解らんよな・・・」
「・・・・・・・」
「まぁ治らんもんはしょうが無い、ちょっと切ってくるわ。ま、盲腸多めに切った思
たらエエねん。」
「・・・ごめんな・・・ほんまやったら元気づけたらなあかんのに。」
Kさんは泣いていた。
「もう、なんでKさんが泣くねん、こういう時普通は患者の方が泣くんちゃうんか?」
そういう僕も泣いていたのだが。