第19話「転院」

兵庫医大へはオヤジの車で行く事にした。
荷物はあらかた片付けていたので出発準備はさほどの事でもなかった。
ヘロヘロなので車椅子で玄関まで行き車に乗る。
主治医のM先生も見送りに来ていたが少し暗い顔をしていた。
手を尽くしたのに治せなかったのが悔しいのか僕のこれからを案じていたのか…
寝台車で運び出されるホトケさんを何度か窓から見た事があるのだが、なんだかお見送りされる死体の気分が少し解ってしまった。
俺だったら思わず合掌して「ご愁傷さまでした」とかウッカリ言っちゃうかもなと思ったが、さすがにM先生は手など合わせていなかった。

「今頃、劇団のヤツラは楽屋でメイクとかしてるんだろな」なんだか少し寂しく思う。
時間があったら劇場を覗いてもよかったのだが高速の混み具合が解らないので早めに出る事にした。

思ったより早く兵庫医大に着き、早々に9階西病棟へと上がった。
婦長さんに案内されて最初8人部屋の31号室へ入ったのだがポータブルトイレを置けない程狭かったので急遽6人部屋の25号室へと変更になった。
早速主治医のS先生が現われ話をする。
「以外と元気そうだね、今日すぐにでも緊急オペするかもしれないと思っていたけど大丈夫そうだね、安心しました。」
M先生が連絡を取った一週間前は確かにヤバイ状態だったので緊急オペという事になっていたようだ。
うちのオカンが「絶対に大腸切らないとダメですか?」と今更ながら聞くと、S先生は
「そんなの切らなダメです。切らなかったら大腸癌になりますよ」当り前の様に言われた。
さすがに外科の先生はドライっていうか割り切ってるというかストレートだ。
結局オペは一週間延ばして、その間にオペのための検査をする事になった。

ベッドは西側の真ん中、向かいと左がオジイちゃんで、右と向い側左が50位のおじさん、向い側右には同い年くらいの兄ちゃんだ。
イビキかく人が居なけりゃいいのになぁーと思う。

夕方、うちの劇団のウチダとキダ君が見舞にくる。
姫路で昼の公演の後こっちに来たらしい、まぁ役者で出ているワケではないので時間はあったようだ。
キダ君が「彼の解釈したエヴァンゲリオンのサイドストーリー」の脚本をくれた…
なぜにこう俺の回りにはこーゆー奴が多いのだろう?類は友を呼ぶという事か。
とりあえずお返しに「キダ君、ほらほらアンビリカルケーブル(IVH点滴の事)」とか「ほらほら、[知らない天井]」とか言ってもてなす。
不思議な事に以外と元気だ。