第23話「老人H」

僕の向かい側にいるオジイちゃんHさんは「アドベンチャー」だ。
僕が入った時、Hさんは鼻から管を入れ熱を出してウンウンうなっていたのだが、なんでもオペ直後で絶飲食なのに食堂で勝手に「月見うどん」と「おにぎり」を食べたかららしい。
普通一週間以上かけて普通の食事に変えていくのだが、イキナリ「月見うどん」だ、お腹がびっくりしてイレウス(腸閉塞、食べ物や胃液等が詰まる)を起こしても不思議では無い。
っていうか起こさない方が不思議だ。
  
彼は3日イレウスで苦しんだ。
なのに、なのにである、また懲りずに食堂で「月見うどん」を食べてきたらしい。
いちおう「月見ウドンだけでオニギリ無し」って所に彼なりの配慮があったらしいのだが、彼にそこまでの危険を犯させる程の兵庫医大の月見ウドンっていったい…?
しかし、看護婦さんの「いい加減にしとかな苦しいのHさんなんやで!!」という言葉を尻目にHさんは2回目のイレウスを起こす事なくピンピンしているのだからスゴイ。
さすがアメリカ相手にケンカ売ってた世代だ。
  
その後もHさんの武勇伝は続く。
Hさんの奥さんが付き添いでずっと居たのだが、Hさんがあんまりワガママ言うし調子も余り良くなかったので帰ってしまったのだ。
するとHさんは「ワシも帰る」と言い出し身支度を始めた。
しかし、そんなすぐ退院していい状態でも無いし、イキナリ許可も降りるハズがない。
看護婦の知らせで駆けつけた主治医の先生と廊下で押し問答をしるハメに。
僕はベットで寝たきりに近い状態だったので現場は見ていないが大声が聞こえてくる。
しばらくするとHさんは暴れだしたらしい。
「誰か!!早く沈静剤を持ってきて!!」「暴れないように取り押さえて!!」「イテテテテ!」
などとエライ事になっているらしい。
オイオイ、ここはER(外国の救急病院のドラマ)か?さすが大学病院は一味ちがうぜ。

ちなみにその後Hさんは主治医に説得されてとりあえずおとなしくなった。
看護婦さんの話では、どうも年の行った人ほどキキワケが無いらしい。
絶食とかも小さい子供とかの方がガマンできるんだそうな。