第36話「聖夜」

オペから一週間、12月24日。いわゆる世間でいうクリスマスイブってヤツだ。
病院でのクリスマスはハッキリ言ってわびしい。
ナースステーションの窓口で悪あがきしてる小っちゃいツリーがわびしい。
晩ご飯に付いてきたパンケーキと給食部からのクリスマスカードがわびしい。
(まぁコレはコレで非常に嬉しかった、給食のおばちゃんアリガトウ。)
よりによってクリスマスに仕事しているナースがわびしい。
しかし一番わびしかったのは、最悪な事に今日1回目のオペでクリスマスどころではない同室のイシカワ君(UC)だったかもしれない。
(ちなみに彼とは3回とも入院同期の戦友というかライバルというか腐れ縁となる)

誰かに電話でもかけて相手して貰おうかとも考えたが、相手して貰えなかったら非常に悲しい思いをするのでグッとこらえた。
点滴も外れて食事も常食になっていたし、足腰も回復していたので、ここはひとつ「脱走」してシャバの空気を吸いに出かける事にした。

外出用の私服が無いのでジャージを隠し持ってナースステーションの前を何喰わぬ顔で通り過ぎる。
「大脱走」のテーマを口づさもうとしたが浮かばなかったので「ワルキューレ騎行」を口づさむ、第一関門クリアだ。
エレベーターで1階へ降りロビーで病衣からジャージへ着替える。
出口をいくつかあたるが閉まっているので警備員詰所の前を通って堂々と出ていく事にした、ちょっとドキドキ。
意外と何も言われずに出る事ができた、大きい病院で出入りが多いからかもしれない。
実際、医学生とかが居残りしてたりするし(人の居ない待合室で寝てる奴もいた)。
第2関門もクリアだ。

歩いて5分程でローソンに着いた、久々に外を歩くと結構疲れる。
店内で知らないうちに出た新製品にちょっち感動するも、早くも疲れてきたので、とっとと買い物をする事にした。
結局、病院の本屋で売っていない雑誌、新製品のジュース、オデンを買った。
帰り道途中の公園で一休みがてらオデンを食べる。
「おぉ!おでんやぁ!!」オデンごときに感動できるんだから安いものだ。
[病院抜け出してオデンをくそ寒い公園で一人月を見ながら食べる]というワビサビの効いた純日本的なクリスマスだった。