42話「一期一会」

世の中には知らなければ幸せな事ってのがある。
退院後、例の彼女の親友Oさんがそのことを教えてくれた。
「あの子な、ホンマはアンタに写真渡したくなかったんやで」
「私があげたりって言ったから渋々あげたんや」
「本当はトキが病院変わった週に新しい彼氏ができたんや」
「なんか演劇見に行った次の日に告白されて付き合いだしたんやって」
「それでまた相手がスキンヘッドのチンピラなんやで、黒いクラウン乗り回してるわ」
「どう思う?あの子ひどい子やでー」
 
「っていうかアンタこそ余計なこと教えてくれる「ひどい子」じゃないか!」その時はそんなコト言える精神的余裕はまったく無かった。
大体「演劇見に行った次の日」って手紙渡した次の日じゃないか。
って事は僕からの手紙受け取ってから付き合ったってことになる。
ちなみにあの手紙には告白が書いてあった。

オペ前に逢った時、彼女はどんな気持ちだったんだろう。
一体どんな気持ちで写真をくれたんだろう。
すごく写真をあげるの嫌だったってなんでだろう?
彼に申し訳なかったから?僕に申し訳なかったから?それとも自分が傷付きたくなかったから?
あの時の涙だって、そう。
誰のためのどんな意味の涙だったんだろう。。。

「そうかー、俺やくざにすら負けるのかー。」
「難病患者で大腸無いから普通の人よりは劣るとは思ってたけどチンピラ以下かー。」
あんまりにも悲しすぎて涙も出なかった。
それどころか他人事のように思えてくる。
『コイツ可哀想なヤツやなー。あの時死んどったら幸せに死ねとったのに。あーあ、もったいない』
人の心って極限まで行くとブレイカーが落ちるらしい。

僕は10年近く彼女の弟みたいな関係で親しくしてて彼女の事を一番知っている(つもり、かもしれないが)彼女はとても優しい人だった、ちょっと残酷なまでに優しい所も有るが。
だからきっとすべて彼女の優しさが原因しているのだと思う。
っていうかそう思いたい。
まぁ実際オペを乗り越えれたのも彼女のおかげだったしね。
  
あーあ、せめて僕がフォレストガンプくらいIQ低かったら苦しまなくてよかったのに。