第43話「出社」

退院したので取り合えず会社に報告がてら出社した。
一応オペが決まった時点で人事の人にはオペが終わるまで自宅療養して良いということで話がついており、社長の了解も得ていた。
仕事しなくて良いって状況で会社にいくのは気楽でいいやね。
入院前は全然休みが取れなくて過労で倒れそうな(実際病気になった)程で仕事に行くの嫌だったが手伝わされる事も無いので気楽だ。
「どれどれ、みんながヒーコラ安月給でコキ使われている様子でも見に行こうかな」ってなもんだ。

実際、僕が入院した直後はプラント班(豆腐の豆乳を作る所)では休みが無くなった。
夜勤2人・昼勤1人・休み1人で毎日ギリギリのローテーションしていたので仕方ない。
しかも休みを利用して昼勤→夜勤へとシフトするため(でないと昼勤の日の夜に夜勤)昼・夜勤の切り替えができず勤務体系が1ヶ月そのままになったという。
けちな会社なので人間ギリギリでやってるからこういう事になる。

よその班では、夜勤明けの睡眠不足(仮眠も休憩も無い)で会社出て30メートルの所で車の横転事故を起こしたヤツが病院から電話入れると「で、今晩の夜勤は出てこれるんやろ?」って言われたり
(彼はその後退職したのは言うまでも無い)
僕が機械で頭挟んで切った時も「今病院行って帰ってきてから仕事するのと、今仕事やって終わってから病院いくのとどっちが良い?」なんて言われたり(結局血だらけで仕事して後で5針縫った)
常務いわく「ウチの会社で1年働けるヤツは他所では10年は働ける根性がつく」だって。
なんて素「敵」な会社なのでしょう、涙が出てくるよ。
当然辞める社員も多く更衣室にはいつも求人誌がおちている。
 
あんまし逢いたくなかったのに常務に出会った。
「おう、ヤナイ。お前ややこしい病気になったから思て[運が悪かった]とは思うなよ。
世の中にはな、もっと大変な病気もっとる人がおるんやからな。五体満足なだけ幸運や思わなアカン」
  
思わず目が点になった。『えっ?この人何いってんの!?』
よくもまぁ、働きヅメで体壊して退院して間もない社員に、五体満足で毎日マージャンとパチンコしかしない社長の弟ってだけで常務やってる高校もマトモに出てない(ヤンキーだった)上司がそんなコト言うのね。
折角「誰も悪くない、ちょっと運が悪かっただけ」って思う事で納得しようと思ってたのに。
しかもその話は社長のウケウリじゃん。
それに社長のは「元気に働けることに感謝して頑張れ」ってイミの話だったハズだが・・・
せめてもうちょっと「大変やったな」とか「もう大丈夫なんか?」くらい言えんのだろうか。