第62話「UCな人達1」

UC患者の特徴として『UC気質』ということがシバシバ語られる。
大体まとめてみると、「几帳面で責任感が強く、必要以上に我慢してしまうがホントは他人に頼るのがヘタで、ストレス発散が上手く出来ない」といった感じだ。
少なくとも植木ひとしはこの病気にはならないハズだ。

同じ病室の60近いMさんはとてもとても几帳面だ。
しかも考えている事を独り言で再確認しちゃう人なので非常に解りやすい。
今日も朝から「前の病院で貰った薬がコレとコレで、今の病院で飲んでる薬がコレとコレとコレだから、えーと、どの薬飲むんやったっけかなぁ」などと大量の薬の整理を少なくとも3回はやっている。
「あーもう、よくわからへん、わしはどの薬飲んだらええんや」
「はぁーあ、看護婦さんにでも聞かな解らへんやろうしなぁー」
「でもそんなんでナースコール押すのんもなんか気の毒やしなぁー」
「はぁーあ、困ったなぁ、どうしようかなー」

Mさんは、別に助けて欲しいからワザと聞こえるように言っているのではなく思考がダダ漏れなだけなので、独り言をいいながら困っている姿は失礼だが非常にオカシイ。
しかも「困っている人を笑ったりしちゃイカン!」とか思うとさらにおかしくなって来るのだ。

そしてある夜のことだった。
夜中も2時をすぎるような頃、僕はベットの中で眠れずにいた。
するとなんだかハス向かいのMさんがゴソゴソしながら独り言を言ってるのが聞こえてきた。

「ん、ん、はぁーあ、うまくいかへんなぁ・・・」
ん。なにをやってんのかなぁ、こんな夜中に。

「・・・しびんが上手いこと取られへんなぁ」
どうやらシビンにオシッコしようとしてるらしい、『あかん、笑ろたらあかん。。』想像するだけでなんか笑ってしまいそうだ。

----じょろじょろじょろじょろじょろじょろじょろじょろじょろ〜----
『めっちゃ長いやん、めっちゃ長いって、貯め過ぎやってアンタ!』それだけでもうオカシイ。

----カンカララー--ン!!---
「あぁ!こぼしてしもうたぁー!・・・はあぁどないしよう・・・」
「あぁもうビチャビチャになってもうて・・・・はぁーあ」
『!!!あかん!笑ったらあかん!絶対死んでも笑ったらアカン!!』
が、シビン片手にしょぼくれるMさんの姿を想像してしまったら笑わずには居られない。
僕は布団の中でオペ直後で痛いお腹を押さえ枕を思いっきり噛んで笑いをこらえた。

「ああぁ、はよ片づけらないかん、よっ、よっ」
ギシギシとベットの音がする、どうやらシビンを取ろうとしているようだ。
---カン、カラカラカラーーーーー-ン!----
「あぁ!どっか行ってもた・・・・、はぁあ・・・・」
目の前にビジュアルが浮かぶ。
『ベットの下をクルクル回転しながら、金色に輝くしぶきをキラキラ撒き散らしながらもスローモーションで滑っていくシビン、その後ろでオーバーラップで浮かび上がるMさんの今にも泣き出しそうな困り顔』

『!!!!!!!!!!!』←そりゃもう生れ落ちたばかりの馬みたいにビクンビクンなりながら涙と鼻水垂れ流しで呼吸困難になる程笑いをこらえている。

その日僕はソラマメの昔話みたいにマジで傷口が開いて腸がはみ出して再手術を受けるんじゃないかと思った。