第65話「マヨパン」

1期2期ともにオペ後お腹の中でトラブルを起こさなければ飲食は結構早く解禁になる。
まったくの絶食だとあまりお腹も空かないのだが、中途半端にゴハンが進むと非常に空腹感が出てくる。
特に朝ゴハンなんか夕食が遅いため、かなりハラヘリグゥな感じだ。
しかも「マヨパン」なんか作られた日にゃたまらない。

食事が5分粥くらいになると朝ゴハンにパンが出てくる。
で、これに売店で買ってきたマヨネーズを塗って、毎朝付いてくるチーズを小さくちぎって均等に並べて焼くのだ。
ちなみに兵庫医大の場合トースターが2台配膳室前の廊下に置かれるので、そこで自分で焼くシステムになっている。
結構順番待ちだったりするので井戸端会議っぽくなったりも。
「あ。なに、それ?マヨネーズ塗ってるの?ええなぁー、私もマネしよ」
そんな感じで、病棟でブームになったりする。

日頃お年寄りの好きそうな油っ気のない食事ばかりなので、そりゃマヨとチーズの香ばしく焼けたニホイは物凄い魅力的だ。
まだ流動食が始まったばかりのイシカワ君がやってきた。

「ええなぁーヤナイさん。このひと、マヨパン食ってるよー。」
「うまいぞ。マヨパン」
「ちくしょー、俺も早く食いてぇー!覚えとけよヤナイさん。もしヤナイさんがそのマヨパンでイレウス起したら今度は俺がヤナイさんの目の前でマヨパン食ったるからなぁ」
「で、そのマヨパンでイシカワ君もイレウスを起す、と。」
「うわぁそんなん最悪やぁ」

入院患者の中にはゴハンが食べられない人も多いので、本当はにおいの強い食べ物は御法度だ。
ヤキソバUFOとか作ったら看護婦さんに滅茶苦茶しかられることになる。
マヨパンも看護婦さんに「回り見てほどほどにね」なんて言われたりする場合もあるが、まぁOKなラインらしい。

腹切って痛い目にあったんだから、ご褒美♪ご褒美♪
安いご褒美だ。
マヨパンを噛み締めると「何でも食べれるって幸せなことだなぁ」って味がした。