第71話「コイとハトと」

兵庫医大の一号館と二号館の間には小さな池がある。
日頃はどす黒い水で中がよく解らないが、ここにはコイが何匹か飼われているのだ。
「エサをあげないで」という看板がデカデカと出ているのだが、不良患者はそんなのお構い無しだ。
売店で買ってきたメロンパンをちぎっておもむろに放り込む。
すると水底に隠れていたコイがのそりと現れる。
最初は一匹二匹なのだが段々その数は増え、もし僕がツキノワグマならベアクローではたき出しまくりたくなる程でてくる。
いやもう、物凄い形相でクチをパクパクさせて今にも陸に飛び出しそうな勢いだ。
「エサやるな」っつーわりに医大の職員は誰もエサやってないんじゃなかろうか。

そうこうしてると今度はハトが沢山舞い降りてくる。
どうもコイ以外にもハトも餌付けされてるらしい、ハトにもメロンパンをちぎって投げてやる。
どこでもそうなのだが大概一羽はどんくさいハトが居るもので、さっきからソイツ狙って投げてるのにデカくて動きの早いずうずうしいハトに横取りばかりされている。
「ち、どんくさいヤツだなぁ」
デカいハトにフェイントで石ころを投げ、それを追いかけてる間に貧相なハトにパンを投げてやる。
が、それでも2回に1回は失敗して横取りされてる、ハトにも不器用な生き方しかできんヤツがいるらしい。

それにしてもハトといいコイといい無防備なヤツらだ、そんな事じゃ簡単に捕まえられるぞ。
まぁ捕まえても食うわけにも行かんが…。
…小学校の時同級生だった栄ちゃんのおじいちゃんを思い出した。
栄ちゃんのおじいちゃんだったら食うな、…うん、絶対食う。
だって、せっかく僕が捕まえてきたウシガエル・雷魚・ヘビ・コイ等々、うちの爺さんが勝手に全部あげて全部食われちゃったもんな。
いくら大腸無くなって何でも食べれる様になったといえ、そういうのはちょっと…。

日向ぼっこしながらエサを投げつつ、くだらないことを考えるのもたまには良いもんだ。
っていうか、【ひなたぼっこ】の【ひなた】はわかるが【ぼっこ】って何だろ?
春の陽気がぽかぽかと心地良い、脳みそが溶けそうだ。