第74話「退院」

二期目の退院はあっさりしたものだった。
術後2週間ちょっと、特にトラブルも無く順調に回復してめでたくシャバに釈放。
「それじゃあ帰るなぁ。また3ヵ月ほどしたら帰ってくるわぁー」
「食べ過ぎて救急車で病院に戻ってこないようにねー」
担当の看護婦さんと挨拶をするものの、気の抜けたもんだ。
病院が日常になりすぎて、退院というよりも長期の外泊のような感じがする。

帰り道、エレベーターの前で僕より先に手術をしたのにトラブルでまだ退院できない患者さんと出会った。
その人は僕より一週間前の手術で超音波メス(ハーモニクス)を入れる前のレーザーメスで手術を受けた患者さんだった。
「先に退院しますけど、頑張ってくださいね」
頑張れと言われた所で、これ以上何をどう頑張れば良くなるってものでもない。
しかも、自分よりあとの手術だったのに、トラブルで調子の悪い自分の先を越して元気に退院していく。
誰かが悪いワケでもないのは解ってるんだけど、解ってるだけに行き場の無いマイナスの感情。
…多分自分がその立場ならそう思うだろうと解っているんだけど、他に言葉が見つからない。
じゃあ何も言わなきゃいいじゃんと思うかもしれないが、それはそれで水臭いような気がするのだ。
だからトラブっている人と話をする時、僕はいつも悩む。

家に帰る。
いつも思うことだが家のベッドにはナースコールが無いのがなんとも不安だ。