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2004年05月20日
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潰瘍性大腸炎:
抗生物質の治療法 順天堂大教授が発表へ

 若い世代に増えている潰瘍(かいよう)性大腸炎に3種類の抗生物質を投与する治療法が有効なことを、順天堂大学の佐藤信紘教授(消化器内科)らが確かめた。胃潰瘍治療でのピロリ菌除菌をヒントにしており、米ニューオーリンズで開かれている米国消化器病学会で、18日発表する。

 潰瘍性大腸炎は大腸のあちこちに炎症が起き、腹痛や下痢、出血を繰り返す。全国に7万人を超える患者がいると推定されている。免疫異常が原因の一つとされ、ステロイド剤投与が主な治療法となっている。

 同大の大草敏史講師は免疫異常を起こす最初の引き金が腸内の細菌だと考え、患者の腸の粘膜から20種の細菌を取り出した。このうちの一種「フソバクテリウム」がつくる毒素(高濃度の酪酸)をマウスの腸に注入すると、潰瘍性大腸炎と同じような潰瘍と炎症を起こすことが分かった。

 大草さんは胃潰瘍を引き起こすピロリ菌の除菌と同様の治療が有効ではないかと考え、同大治験審査委員会の承認と患者の同意を得て臨床試験を実施した。潰瘍性大腸炎の患者20人を、フソバクテリウムに有効な抗生物質3種を2週間飲む群と飲まない群の2グループに分け、投与後3カ月と1年で比較した。

 飲んだ群は血便がなくなり、下痢の回数が減った。内視鏡検査でも潰瘍がなくなるなど炎症が改善した。これに対し、飲まなかった群に大きな変化はなかった。1年後の追跡調査では、飲まなかった群の半数で潰瘍性大腸炎が再発、飲んだ群の再発者は1人だった。

 大草さんは「ピロリ菌除菌は治療法として確立しており、この治療法も新しい治療法として期待できる」と話している。【吉川学】

毎日新聞 2004年5月18日 10時37分

毎日新聞速報から

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